春雨か 枯れた櫻に 雀ひとつ
春雨か 枯れた櫻に 雀ひとつ
二月の下旬であったか、小雨の中を散歩していた。ふと、疎水沿いの櫻の枝に、小雨に濡れて雀が一羽身じろぎもせず止まっているのに気づいた。
春雨と言うにはまだ寒い。そぼ濡れる雀は生きてはいた。
寂寥か、孤独か、哀切か、寂寞か、残酷か、また超然か。
老いゆく身に、その姿がいとおしい。感傷という名の感動が、その時もっともみずみずしい。
老いたら死ねばいい。治療などただ残酷なだけだ。それは健康な者の勝手な思い過ごしに過ぎない。黙って死なせてやればいい。
余計なことはしないがいい。老いた者が死んでゆくのは自然なことだ。引き留めたところで、皺一つ減るものでもない。
延命治療という名の傲慢。悪あがきか、執着か、未練か、業か。
何にそんなに固執するのか。やはり美しさでは若者には叶わない。
覚えているか、乳飲み子のあのふくよかなみずみじしさを。飛び跳ねる若者のはなやぎを。
さからわぬことだ。抗わぬことだ。老けてゆくおのが身の衰えに。天の摂理に勝てるはずもない。
いま人は、余りに長く生きすぎている。若い命のために、老いたものは死んでゆくのがいい。老いたいのちが、若いいのちを削ってはいけない。
老いには、それにふさわしい形がある。

