三たび島津亜矢
春にこのブログに書いて以来、YouTubeにアップされている島津の歌は全て聴いてみた。手前味噌な言い方ながら、やはり彼女の魅力は、その天賦のと言うべき声の質にある。あの哀切に満ちた、独特の艶のある声は、余人には出せぬ声だ。
「お島千太郎」などは、オリジナルとは全く別の歌だ。まるで違う舞台を創っている。台詞も違えば、お島と千太郎の人間関係もまるで違っている。これは、歌唱力の優劣の問題ではないが、ただ聴く者の感情に入るものが大きく違ってくる。
僕が、ひばりのことをどうしても好きになれなかったという所以である。確かに不世出の天才だったのだろう。船村徹氏が、初めてひばりに会った時、「これは大変なことになった。これからどう付き合っていけばいいのだろう。まるでブラックホールに吸い込まれそうな思いだった」という話をしているのを聞いた。
ひばりは新しい曲を一回弾いて聞かせたら、船村氏が思っていた通りの世界をすでに自分の中に創っていたと。あるいは普通の歌手が何回も何回も繰り返すレッスンを、ひばりは1回か2回で終わったと。
船村徹という大御所の述懐である。
しかし、僕は、故意にひしゃげるような声を出したりする、あの発声法からして好きにはなれなかった。何より、僕には心に響いてくる何もないのだ。天才というなら、僕には、才に任せた、あるいは歌の巧者、上手と言うべきか。とは言え、心に響く歌を歌う歌手がそうざらにいるわけではないが。
戦後60余年、歌謡界の実力者を一人挙げよと言えば、殆どの人が躊躇なくひばりの名を挙げるのであろうから、僕は甚だ肩身が狭いのだが、人にはそれぞれに微妙に違った心の波長があるのだろうか。

